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自転車事故の高額賠償判決~交通事故被害者を救済する弁護士の視点

2013年7月5日神戸地裁判決

 小学5年生の男子児童が自転車で女性をはねて寝たきりの状態にさせたとして、被害女性の家族と保険会社が児童の母親に損害賠償を求めた訴訟で、2013年7月5日神戸地方裁判所は、児童の母親に計約9,500万円の支払を命じる判決を下しました。


 判決によると、児童は2008年9月22日午後7時前、神戸市北区の坂道を自転車に乗り、時速20~30㎞で下った際、散歩中の女性と正面から衝突しました。女性は約2mはね飛ばされて、頭などを強く打ち、意識が戻らない状態(いわゆる植物状態)になりました。


 近年、自転車の種類が多様化する一方で、携帯電話を利用しながら運転するといった自転車利用のマナーや安全性が問題となっています。警察庁によると、交通事故の中で自転車関連が占める割合は増加傾向にあり2011年では約2割になりました。


 ここ福岡でも平成24年度福岡県警の発表によると、全交通事故の発生件数が43,178件に対し、自転車事故の発生件数が7,088件と決して低い数字とはいえません。


 本判決は自転車利用者とその親に対する高額の損害賠償を認めたもので、こうした問題状況を反映した重要な判決といえるでしょう。


 さて、今回の判決では、被害者が自分の保険会社から6,000万円を先に取得しているようです。


 これは、被害者側の自動車保険の人身傷害保険から支払われていると思われます。


自己防衛のために

(1)人身傷害保険の確認

 保険会社によっては、「自転車と歩行者の事故には使えない」としている保険会社があり、その場合には、今回のケースでは支払われません。早急に自己の自動車保険の確認が必要でしょう。


 仮に、人身傷害保険が使える場合であっても、今回のような重大事故に備えて、支払い限度額を無制限にしておく必要があります。


 今回の裁判の例では、人身傷害保険の限度額が6,000万円であったため、その制限を受けています。仮に、無制限の特約であればすべての金額を補償してもらえた可能性があります。


(2)個人賠償責任保険

 加害者に資力がない場合に備えて、自動車の個人賠償責任保険で対応したり、火災保険の特約として個人賠償責任保険で対応できる場合があります。


今後の課題

 高額な損害賠償が認められたとしても、それが実際に被害者に支払われなければ意味がありません。


 もっとも、加害者個人の資力で数千万円の賠償金を支払うことができるケースは極めて稀です。仮に自動車事故であれば加害者は自賠責保険に強制的に加入していますし、任意保険に加入している場合が多いことから、被害者は保険会社を通じて相当額の賠償金を受け取ることができます。


 他方で、自転車事故の場合は自賠責保険に相当する強制保険制度はなく、加害者が自転車事故をカバーしている任意保険に加入していることも少ないため、結果的に被害者が泣き寝入りすることになります。


 道交法上は自転車も自動車と同じく「車」にあたります。そして、事故が起きた場合に被害者を死亡ないし重大な後遺障害を残しうる点で、自転車事故も自動車事故も同等の危険性を持っています。それにもかかわらず、現在の法制度の枠組みでは自転車事故の被害者を確実に救済することができません。


 社会的に自転車が持つ危険性が認知され、司法によって高額な損害賠償が認められるに至った今だからこそ、被害者救済の視点から法制度の拡充が必要ではないでしょうか。


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1 コラム執筆にあたって

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