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弁護士法人 たくみ法律事務所

高次脳機能障害を残す交通事故被害者支援~MSWとの協力を通じて

はじめに

弁護士櫻井正弘

 弁護士の櫻井です。

 たくみ法律事務所では、交通事故の被害者救済のための取り組みの一つとして、福岡県の医療ソーシャルワーカーと交流があります。

 医療ソーシャルワーカーとは、保険医療機関において、社会福祉の立場から、患者様・そのご家族の抱える経済的・社会的問題の解決等を援助し、社会復帰の促進を図る業務を行う方々のことです。

 弁護士と医療ソーシャルワーカーが協力することで、高次脳機能障害や遷延性意識障害などの重度後遺障害を負われた交通事故の被害者の救済を十分なものにできると考えております。

 今回のたくみのこだわりでは、交通事故被害者のために我々弁護士が活動している内容、その中でMSWとどのような協力を行うのかを、実際に当事務所で解決した事例をもとにご紹介します。

当事務所の紹介

集合写真

 当事務所は福岡市中央区渡辺通に位置しており、弁護士8名体制で活動を行っています。

 事務所業務の中心となっているのは交通事故事件(被害者側のみ)であり、2016年には九州地方最大級となる771件の交通事故相談が寄せられました。

 事務所名のとおり、「法律のプロ(匠)」として、依頼者に寄り添った最良の法的サービスを提供し、「満足」を超えた「感動」を追求することをテーマとしている事務所です。

交通事故発生から事件終結までの概観

 一般的な交通事故では、【事故発生】→【治療】→【症状固定・後遺障害 申請】→【損害賠償請求】→【示談・裁判】という経過をたどります。

 この流れの中で、弁護士としては種々の活動を行っているが、特に重要となるのが【後遺障害申請】【損害賠償請求】です。

後遺障害申請

 交通事故で傷害を負って症状が残存した場合、自賠責保険調査事務所がこれを審査し、後遺障害等級認定を行います。

 等級制度は労災に準拠したものとなっており、1級から14級まで等級が存在しています。

 例えば、追突によって頚椎捻挫を生じた場合には概ね14級9号(又は非該当)が認められ、また脛骨高原骨折後に膝関節可動域が健側の2分の1以下となっていれば、10級11号が認定されます。

 可動域制限のように客観的に判定できる類の後遺障害であれば、後遺障害申請について弁護士がサポートする部分は少ないです。

 もっとも、高次脳機能障害のような障害の程度立証を伴う後遺障害申請 では、提出する資料によって等級判断が大きく異なるため、必要最低限の提出資料に加え、被害者の現状を自賠責保険に正確に伝達できる追加の資料を準備する必要があるのです。

損害賠償請求

 交通事故での損害賠償では、3つの賠償基準が存在します。

 ひとつは、自賠責基準というものであり、これは、自賠責保険金の支払基準を指すが、損害賠償基準としては最も低い基準です。

 もう一つは、任意保険基準です。

 これは、任意保険会社の社内基準であって公開はされていないのですが、自賠責保険基準に若干の上乗せをしたもので、支払金額は低いです。

 最後に、裁判基準(弁護士基準)があります。

 現在に至るまで多くの交通事故訴訟が行われ、裁判例が蓄積されることで、慰謝料額などの金額につき一定の定額化が生じており、この裁判基準こそが交通事故被害者の被った損害を適正に評価した額を定めているものです。  

 そして、交通事故被害者に弁護士がつくことは、任意保険基準から裁判基準に賠償額を増加させる点 に大きな意味があるのです。

事例報告

事故の概要

被害者 70代女性
事故態様 四輪車を運転する加害者が、車内でバッグを拾い上げるため前方への視線を外したまま直進進行を続け、信号機のない交差点を横断しようとしていた被害者と衝突したというもの 。
傷病名 脳挫傷、びまん性軸索損傷 、外傷性くも膜下出血等

初回相談

相談風景

 事故から10日後、被害者のご子息が相談するた来所されました。

 弁護士より事件終結に至るまでの流れや必要な手続、解決までの時間的見込みを説明し、加害者に対する損害賠償請求を行う代理人として依頼を受けました。

 なお、ご子息が相談時に最もこだわっていた部分は、どちらかといえば損害賠償の額よりも、加害者に対する刑事処罰をいかに重くすることができるのかという点でした。

 加害者への強い怒りを刑事裁判の際に伝えたいということだったため、刑事手続への参加も当事務所で受任することとなりました。

 依頼を受けた後、直ちに加害者側任意保険会社(以下、「相手方」)に対して受任通知を送付、これ以降は相手方から被害者に対する直接のコンタクトを禁じ、当事務所が全ての窓口となりました。

 これは、被害者及びご家族が相手方対応に煩わされることなく治療に専念していただくための処置です。

治療期間中の対応

弁護士櫻井

 一般に、相手方は、治療費の支払いを行うものの、入院に際して必要となる諸雑費や家族の付添に要する交通費などについて自発的に支払うことは多くないです 。

 このため、長い治療期間中に立替えなければならない費用に困る被害者もいます。

 本件では、被害者の治療が長期化することが予想されたため、一ヶ月ごとの入院雑費や交通費などの内払いを求めて交渉しました。

 その結果、月ごとに相手方から支払いを受けることができ、経済的に困窮することを防ぐことに成功したのです。

医療機関との第一回面談

 事故から2ヶ月後、入院中の病院を訪問し、被害者と面会し、認知機能に大幅な制限が出ていることを直接確認し、重度の後遺障害が残る可能性を把握しました。

 残存した後遺障害を適切に後遺障害等級へ反映することが、すなわち適正な損害賠償額を獲得する最大のポイントになります。

 併せて主治医、主担当看護師、理学療法士、言語聴覚士と面談を行いました。

 目的は本人の病状と症状固定時期の確認です。

 この病院は入院期間が180日間に限定されていたため、退院時に症状固定とする見込みを弁護士、医療機関、家族で共有しました。

退院拒否とこれに対する説得

 当初申し合わせをしていた入院180日が徐々に近づいてきた時期に、被害者家族から病院に対し、まだ退院をしたくないという意向が伝えられました。

 退院後は施設に入所する予定だったのだが、そこでの介護体制に不安があり、入院先の病院でリハビリをするほうが回復の助けになるのではないかという懸念が理由でした。

 退院支援を行っていたMSWとは、この問題が生じる以前より、退院後に入所予定の介護老人保健施設 の状況について打ち合わせを行っていました。

 この際、MSWからは、入所先の施設が有する設備、人員、リハビリ制度の情報が提供され、当事務所としても入所予定の施設で十分な介護・リハビリが可能であるという認識を持つことができていました。

 その認識のもと、弁護士よりご家族に対し、今後の介護やリハビリ、後遺障害等級認定への影響を考慮すると、入院180日での退院と症状固定が被害者にとって最も有利になるという説得を行い、結果として180日での退院と症状固定に同意を得ることができました。

 経験上、高次脳機能障害を含む重度後遺障害を残した交通事故被害者(もちろん、交通事故被害者以外の患者もそうであるが)は、病院での治療継続を望むことが多い印象があります。

 本件の被害者家族と同様、退院後の不安を理由とするものも多いが、退院が賠償に影響を与えるといった誤解に基づくものもやはり多いです。

 このような場合、退院支援を行うMSWはじめとした医療機関と、交通事故被害者は対立関係となってしまい、なかなか退院までこぎつけられないことが多く見られます。

 しかしながら、被害者側の弁護士は「被害者の味方」であるため、弁護士からの説得は受け入れる傾向にあり、弁護士とMSWの認識の共有は双方にとってメリットがあると言えるのです。

後遺障害申請に向けて

 退院時期が間近になったころ、主治医、主担当看護師、MSW、理学療法士と面談を行い、後遺障害申請に必要な書類の作成 や検査の実施依頼、退院後の支援について最終調整をしました。

 また、家族とも面談を行い、「日常生活状況報告書」を作成していただきました。

 日常生活状況報告書は、事故前事故後の能力比較を「0(問題なし)~4(大きな問題がある)」、問題行動の頻度を「0(ない)~4(ほぼ毎日ある)」というふうに数値で記載する書式となっています。

 しかし、数値のみでは具体的にどのような支障が出ているかを自賠責保険が判断しづらいため、低い等級が出る傾向にあり、日常生活状況報告書において「4(大きな問題がある)」などと記載されている点について、当方が具体的なエピソードを家族から聞き取り、陳述書形式にまとめて別紙として添付することで、障害の実情を正確に伝達する必要があります

 全ての必要書類が完成し、被害者は退院、症状固定をしました。

 被害者はそのまま介護老人保健施設へ入所、当方は自賠責保険に対し、速やかに後遺障害申請を行いました。

成年後見申立て

 被害者に残存した症状は高次脳機能障害(重度の見当識障害、注意障害、記憶障害等)であり、食事、更衣、排泄、入浴等生命維持に必要な身の回り処理の動作について、他人の介護が必要な状態でした。

 このため、被害者には後遺障害第1級1号または2級1号が認定されると予想されました。

 仮にこれらが認定された場合、被害者は示談や裁判をすることはできない ため、成年後見を付けなければなりません。

 特に、高次脳機能障害の後遺障害認定は申請から時間がかかるので、この間に成年後見の申立ても行うこととなりました。

 本件では、被害者の夫と司法書士が後見人になることが決まり、当事務所は申立書、必要書類の作成を行いました。

 そしてこれをもとに申立てを行い、無事後見開始の審判がなされることとなりました。

 私の見解として、交通事故被害者の成年後見人と、損害賠償請求を代理する弁護士は別々にしたほうがよいと考えています。

 損害賠償請求を行う弁護士は実質的に家族から依頼を受けている状態ですが、その反面、成年後見人は被害者の利益を守るのが職務であるため、家族が「被害者の財産」を「被害者のため」に用いようとしても、成年後見人の許可が必要となり、家族とは対立関係になりがちなのです。

 相手方との交渉、裁判を行うのに家族の協力は不可欠ですが、成年後見人を兼務すると、これが困難になりやすいです。

 このため、今回も損害賠償請求担当の弁護士と、成年後見人担当の司法書士で分業することにしました。

裁判の準備・将来介護費について

 本件では将来介護費について争いになることが予想されたため、示談交渉での解決は困難であり、当初から訴訟提起を前提としていました。

 このため、訴訟での将来介護費の立証に備え、種々の証拠収集を行っていました

 前述のとおり、被害者家族は介護老人保健施設でのリハビリ後、自宅介護に移行することを希望しており、自宅介護費の算定が必要です。

 しかしながら、自宅介護費の算定には困難が多く、弁護士は自宅介護の際に利用可能な福祉制度についてそこまで詳しいわけではないため、本件でも、最初は当方で制度調査を行っていましたが、選定した制度利用が被害者に最適なのか確信が持てませんでした。

 このため、これまで打ち合わせをしてきたMSWに相談、介護保険の利用を前提とした介護計画を立案してもらい、これに沿った主張を行うことにしました。

裁判

 訴訟提起後、争点となったのはやはり将来介護費が中心でした。

 相手方弁護士からは、施設介護後に自宅介護へ移行する可能性が低いこと、自宅介護費の妥当性などが主張されました。

 しかし、自宅介護が十分可能であるとの主治医意見や、前述の自宅介護費立証資料をもとに主張を行い、最終的に裁判所から総額1億6,380万円の和解案が提示されました。

 なお、被害者の過失割合は0%とされました。

 主な費目について「実際の和解案」と、「終生に渡る施設介護と過失割合5%を前提とした場合に想定される和解案」の比較表は以下のとおりです。

費目 和解案 想定和解案
治療費 1,250万円 1,250万円
入院雑費 40万円 40万円
入院付添費 120万円 120万円
休業損害 210万円 210万円
傷害慰謝料 380万円 290万円
逸失利益 1,900万円 1,900万円
後遺障害慰謝料 2,800万円 2,800万円
将来介護費 7,900万円 6,500万円
介護雑費 600万円 0円
自宅改造費 130万円 0万円
成年後見人報酬 450万円 450万円
近親者慰謝料 600万円 600万円
過失 0% 5%
合計 1億6,380万円 1億3,450万円

 この和解案を当方、相手方ともに受諾し裁判は終了、事件は解決しました。

おわりに

 本件は、事故直後から受任したこともあり、賠償額の交渉のみならず、刑事裁判への関与や後遺障害の立証など、種々のフォローを行うことができました。

 やはり、重度後遺障害事件については早期の弁護士介入が必要だと改めて感じました

 また、本件で医療職の協力は不可欠でした。

 特に、将来介護費という最も大きな費目の立証では、MSWに立案してもらった介護計画が極めて重要な役割を果たしていました。

 その協力なしに被害者が十分な補償を受けられたかといえば、恐らく無理だっただろうと思います。

 1億6,380万円という賠償額が、被害者とその家族の苦しみを消し去ることは決してないのですが、それでも介護費用の不安なく生きていくことができるのであれば、弁護士とMSWが協力し、ともに被害者のため活動した意味はあったはずです。

 だからこそ、弁護士とMSWという専門職同士の交流を、これからも是非続けていきたいと当事務所は考えています。

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