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最高裁令和4年3月24日判決について

本件の争点

本件の争点は、人身傷害条項のある保険約款が適用される自動車保険契約を締結していた保険会社(以下、「人傷社」といいます)が、被害者に対し保険金を支払った後、自賠責保険から自賠法16条1項に基づく損害賠償額の支払として金員を受領していた場合に、この受領した金員に相当する金額を、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から全額控除することができるか否かといったものです。

最高裁判所

この点に関し、1審及び原審である控訴審は、結論として、全額控除できるとの判断を下していました。

当方の主張

これに対して我々は、全額控除することができるとする1審及び原審の判断は誤りであり、人傷社が被害者に対する人身傷害保険金の支払により保険代位することができる範囲を超えて控除されることはない旨上告審(最高裁)において主張しました。(※本件では、人傷社が自賠責保険から受領していた金額は約80万円、被害者に支払われた保険金の全額が人身傷害保険金であるとすれば、人傷社が保険代位できる金額は裁判基準差額説により約10万円でしたので、いずれの立場を取るかによって、裁判において被害者に認められる損害賠償請求権の額に約70万円の差が出ることになります)

最高裁の判断

その結果、最高裁は、我々の主張を採用し、人傷社が保険代位することができる範囲を超えて控除されることはない(約10万円の限度で控除)と判断しました。

最高裁がそのように判断した理由についてですが、その前に、原審が全額控除できるとした理由を確認しておきます。

原審は、概ね以下の1、2の理由から、人傷社が自賠責保険から受領した金員に相当する全額を控除しました。

  1. 被害者と人傷社との間での保険金が支払われるまでの経緯に鑑みると、被害者と人傷社との間で、被害者が受領する保険金には自賠責保険金が含まれるとの合意があった。
  2. 保険金を受領する際に作成される協定書の内容によれば、被害者は、人傷社に対し、受領した保険金の限度で自賠責保険金の受領権限を委任したものと解することができるから、その後人傷社が自賠責保険金を受領した場合には、被害者も自賠責保険金を受領したことになると解すべきである。

これに対し最高裁は、人身傷害条項等の約款の記載内容や保険金が支払われるまでに作成される文書の記載内容等を理由に、原審の判断とは異なり、被害者が人傷社に対し自賠責保険金の受領権限を委任したものと解することはできず(上記2の否定)、支払われた保険金はその全額が人身傷害保険金(自賠責保険金が含まれているわけではない)というべきであるから(上記1の否定)、人傷社が人身傷害保険金の支払いにより保険代位できる範囲を超えて控除されることはないと判断しました。

おわりに

実務上、被害者が人傷社から訴訟提起前に保険金を受領すること及びその後に人傷社が自賠責保険から自賠法16条1項に基づく損害賠償額の支払として金員を受領することは少なくないことから、今回の最高裁が下した判断は、重要な意義を有するものといえるでしょう。

実際に、既に全国の弁護士から、「同様の論点を裁判で争っているので、どのように対処したのか教えて欲しい。」と我々に問い合わせがきています。

ただ、今回の最高裁の判断は、本件に適用される約款や保険金受領までにあたって実際に使用された書面等に基づいた事例判断であるため、本件と同様の事案に対してどこまで今回の最高裁判決と同じように考えることができるかについては、今後議論がなされていくものと思われます。

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