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弁護士法人 たくみ法律事務所

【解決事例】腕神経叢損傷の後遺障害で申告外所得が認められ約8700万円の補償を受けた事案

腕神経叢損傷の後遺障害で申告外所得が認められ約8,700万円の補償を受けた事案(5級6号)

1.事故発生

 福岡県糟屋郡に在住する30代の自営業の男性が、歩行中、道路に倒れていたところを自動車で右腕を轢過されるという交通事故に遭いました。

 その結果、右腕神経叢損傷の傷害を負い、右腕が全く動かなくなってしまい、後遺障害等級5級6号(右上肢機能障害)の認定を受けました。

2.相談・依頼のきっかけ

 後遺障害の認定が下り、今後のことについて知りたいとのことでご相談をお受けしました。

3.当事務所の活動

 保険会社との交渉では、基礎収入と過失割合にどうしても折り合うことができず、訴訟を提起しました。訴訟の中では下記のとおり、基礎収入と過失割合の点が大きな争点となりました。

(1)基礎収入について

 逸失利益は、「基礎収入×労働能力喪失率(5級=56%)×就労可能年数」という計算式により算定されるため、逸失利益において基礎収入額というのは、非常に重要なものになります。

 また、休業損害についても基礎収入をもとに算出されるため、休業損害の算定としても重要でした。依頼者は自営業者で、事故前の年間収入額は確定申告書上約130万円という方でした。

 通常、自営業者の収入額は確定申告などの公的機関に提出した書類を前提に算出されます。しかし、今回の依頼者の話をよく聞いてみると、実際の収入額は130万円どころではなく、さらに多いはずであることが分かり、実際の年間売上額から、諸経費を引いた金額を基礎収入額として主張しました。

 >>自営業者の逸失利益についての基本的な考え方はこちらをご覧ください。

 これに対しては、当然相手方は、確定申告の所得額を基準として算定すべきであると反論してきました。実際に、裁判例においても「申告外所得の認定は、厳格に行われるべきであり、収入や経費につき、信用性の高い証拠による合理的な疑いを入れない程度の立証がなされる必要がある」とされており(大阪地裁平成8年3月19日判決等)、申告以上の収入があったことを立証するのは、非常に困難です。

 しかも、依頼者は自身で総勘定元帳など十分な資料を作成しておらず、上記の信用性の高い証拠がなかなか存在しない状況でした。

 そこで、当事務所は、依頼者の収入を明らかにするために依頼者が仕事に使っていた通帳を精査して、具体的に売上額がいくらあること、依頼者の業種の経費率が一般的にはどの程度であること、同業者に比べても依頼者は経費率が低いことなどから、実際には申告外の所得が一定程度あることが明らかである旨を具体的に主張しました。

 さらに、依頼者の年齢、家族構成や日々の収支を詳しく聞き取り、その生活状況が当方の主張する収入に見合うものであることを主張しました。

 その結果、基礎収入を、確定申告主張額である130万円を大きく上回る、30代男性の平均賃金(524万9,900円)で認めてもらうことができました。

 確定申告額である130万円で計算された場合と、524万9,900円で計算された場合は、結果的な賠償額として逸失利益だけで約3,000万円ほど増額されたことになります。

(2)過失割合

 依頼者自身が道路に倒れこんでいたので、被害者にも大きな過失が認められうるケースでした。

 そこで当事務所は過去の裁判例を調査し、被害者が路上で倒れているケースで被害者に有利な過失割合を認めているものを探し、本件事故の警察の事件現場記録を照らし合わせました。

 本件事故現場は、道路の幅、明るさ、交通量において、過去に被害者に有利に判断されたケースと共通している事例を用い、その事例と比べて本件でも依頼者の過失割合を有利に判断すべきである旨を具体的に主張しました。

 その結果、通常5:5の過失割合を、4:6と被害者側に有利に認めてもらうことができました。

4.当事務所が関与した結果

 判決では、全損害8,641万円として認定したうえで、4割の過失相殺により、5,695万円が認められました。

 さらに、依頼者の方はご自身の保険で人身傷害保険に加入しておりました。そのため、人身傷害保険、自賠責保険による保険金で約3,000万円(保険金額満額)の支払いを受けられ、過失相殺で削られた4割(約3,450万円)のほとんどをカバーできたことになり、結果的に全損害額に近い金額での解決ができました。

5.解決のポイント(所感)

(1)基礎収入について

 今回のケースでは、保険会社との示談段階から、基礎収入が大きな争点でした。

 自営業の方の場合、収入と支出を客観的に証明できる資料が少ないことがほとんどです。今回の依頼者の方は、総勘定元帳などの資料は無かったものの、通帳や領収書等をきちんと保管されていたのでなんとか立証することが可能でした。

 また、その通帳などの資料に基づく主張に加え、実際の生活状況などを主張し、裁判官に対し確定申告書通りの金額では到底生活できないとして、実際の収入額はもっと多いことを裁判官にアピールできた点が功を奏したのではないかと思われます。

(2)過失割合について

 被害者が道路上に寝ていたために起きた事故であり、基本的に加害者のみの主張(実況見分調書や供述調書など)を前提に過失割合が判断されてしまいがちです。

 そこで、加害者の主張事実を前提としたとしても、類似裁判例を緻密に分析したうえで具体的に主張することにより、最終的に過失割合を有利な結論で判断してもらうことができました。

(3)尋問について

 通常、判決が出る前に当事者の尋問が行われます。

 しかし本件では、とある事情から依頼者本人の尋問の精神的負担があり、依頼者の意向からなるべく尋問をしない方針で考えていました。

 そのため、裁判官に尋問前に具体的に和解案を提示してもらったうえで、どのような判決が出るかを予測した上で、当方で立証が足りていないと考えられる部分を積極的に追加し、原告を尋問しても事故状況は分からないため必要性がないなどとして、尋問をしない形でもこちらに不利にならないよう最大限努めました。

 その結果、尋問を経ずとも上記基礎収入額、過失割合を認めてもらうことができました。

5.インタビュー

――申告していた所得が低く、実際の所得が判決で認められるかが大きな問題点でしたが、判決で申告外の所得まできちんと認められました。
 判決までいった場合には、申告外の所得が認められず和解案より獲得金額が大幅に下がるリスクもありましたが、良い判決をもらえて幸いでした。
 また、遅延損害金が付いたので、だいたい弁護士費用もカバーできたことになります。

 よかったです。本当に、やっと終わったかなと思います。

――認定前に初めて相談に来られて、もうすぐ認定が下りるという段階での相談だったのですが、どのように弁護士を選んだのですか?

 インターネットを使って妻と二人で調べました。色々と弁護士のホームページを見ました。

――特に当事務所を選んだのは、なにか理由があるのですか?

ネットを見て、「ここなら」と思いまして。ここに相談に来たあとも、特に弁護士は探していません。

――しかし、必ずしもネットの情報通りということもありませんからね。
 弁護士の中には、全く面談をせずにメールと電話と郵送のやり取りのみという方もいらっしゃるようですし、そういったことに不満を感じて弁護士を解任し、当事務所に来られたという方もいらっしゃいます。

 そんなことがあるのですか?それはちょっと信じられないという感じですね。

――今回の件での感想は、どうでしたか?

一番は所得のことですね。申告がものすごく低かったので計算が大変でした。

ただ、弁護士さんには、将来のことを考えていただいて、帳簿がない中でも、あれがありませんか、これがありませんかって聞いてもらいました。

少しでも資料を集めて、少しでも認めてもらおうという感じが伝わってきていました。

――申告外の所得が認められるのはとても厳しいケースですからね。通帳や領収書があったことが幸いしましたね。

そうですね。さすがに相手方の主張通りで計算されていたらもうどうしようもないという感じでしたからホッとしました。

お金のことですけど、後遺症でいろいろと不自由になる以上、これからのためにはなくてはならないお金ですから。

――本当に、私たちの請求が認められてよかったですね。長い間、ありがとうございました。

 ありがとうございました。

2013.12.26掲載

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