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自動運転で事故。責任はない?

はじめに

 最近の自動車のCMは、「自動でブレーキがかかる」「車線からはみださない」等と自動運転技術をアピールするものが多くあります。

 平成28年6月30日、アメリカの電気自動車メーカー、テスラ・モーターズ社の乗用車「モデルS」が自動運転機能作動中に死亡事故を起こしたとしてニュースになりました。

 報道によれば、モデルSは、センサーで周囲を把握し、高速道路で指定通りの車間距離や速度を保って走行するシステムですが、強い日差しのため、前方に進入するトレーラーを認識できなかったことが事故の原因のようです。

 自動運転により交通事故が減少することが期待されますが、自動運転は交通事故賠償に、どのような影響を与えるのでしょうか。

 自動運転で事故を起こした場合においても、運転手は責任を負うのでしょうか。

自動運転のレベル

 そもそも、自動運転と一言で言っても、様々なレベルがあります。

 米国運輸省の国家道路交通安全局(NHTSA)が定義した自動化レベルが参考になります。

レベル0 システム支援なし
レベル1 加速・操舵・制動のいずれかの操作をシステムが行う。(例:横滑り防止、自動ブレーキ)
レベル2 加速・操舵・制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う。(例:車線維持)
レベル3 加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、システムが要請したときのみドライバーが対応する。(例:高速道路や駐車場内等限定された交通条件で可能な自動運転)
レベル4 加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、ドライバーが全く関与しない。(例:乗員は行き先を決めるだけ)

 なお、アメリカで事故となったモデルSの詳細は不明ですが、おそらくレベル3に該当すると思われます。

 レベル2においても、車の運転におけるいずれかの操作をドライバーがしなければならない以上、常に運転責任があると考えられ、事故を起こした場合、ドライバー自身に賠償責任が発生すると考えられます。

 しかし、今回のテスラ、高速運転時には加速・操舵・制動すべてを自動で行う場合の法的責任については難しいところですが、レベル3についても人身事故を起こした場合、ドライバーの責任は免れられないでしょう。

交通事故賠償精度と自動運転

 法律的な説明です。

 そもそも、現在我が国における交通事故賠償制度は、自賠責法第3条により、運行供用者(運行支配し、かつ、運行利益を得ている者)による対人事故の場合、

  1. 自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
  2. 被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと
  3. 自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと

を証明しないかぎり、責任を負うとし、その証明は相当困難であることから、実質的に無過失責任主義を採用しています。

 レベル3における対人事故においても、システム要請時にはドライバーが対応し、かつドライバーが自動運転から自身での運転に切り替えることが自由であることなどから、ドライバーが運行支配し、運行利益を得ていると考えられることから、責任を負うと考えられます。

 今後はレベル4の段階のいわゆる完全自動運転車が登場してくることも考えられ、上記の自賠責法の考え方からすれば、この場合、ドライバーの責任とはいえず、自動車メーカー、システム開発会社の責任(製造物責任等)へ性質が変化していくことが考えられます。

 それに伴い、PL(製造物責任)訴訟も増加していくことも予想されます。

 製造者責任を負う基準となる「通常有すべき安全性」についても、自動運転の関係では現在事例の蓄積を待っている状況です。

おわりに

 自動運転により交通事が減少し、交通事故による死傷者が減少することは望ましいことです。

 しかし、システムは誤作動やバグも含め完全ではありません

 自動運転技術が搭載された車を運転する場合においても、そのシステムを過信せず、あくまで自身が責任者であるとの自覚することが重要です。

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